小説『ミレニアム2 火と戯れる女』 マッチ燃やしの少女
小説『ミレニアム2 火と戯れる女』を6年ぶり5度目の読了。完全にこの数日寝不足にさせていただきました、本当にありがとうございました。なんで精神と時の部屋って貸し出しされてないんですかね?
タイトル通り熱い小説。前回このブログでオススメさせていただいた小説『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』のシリーズ続編。話としては別物だけど、もし初めて読み始めるなら1から読んで欲しいところです。
なるべく直接的なネタバレはしないように書いていくつもりですが(ネタバレしないとは言ってない)ネタがダダ漏れしてたらすみませんの世界です。
小説『ミレニアム2 火と戯れる女』 火遊びしがち
とりあえず、『ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女』は読んできて頂けましたでしょうか? ありがとうございます。前作にて、主人公ミカエル・ブルムクヴィストとヒロインのリスベット・サランデルの間では、サランデルにとっては予期せぬ感情が沸き起こり一方的な絶交状態になってしまいました。
ミカエルは当然「???」状態。でも仕事はしなければならないし、新たに世間をあっと言わせるような記事を描こうとしているフリージャーナリストのダグ・スヴェンソンがミカエルが発行責任者を務める雑誌ミレニアムにやってきて大忙し。そんな中事件が発生し・・・。
「火」はこの小説にとって一つのポイント。サランデルにとっても、自分の強さを思い出す「あの最悪の出来事」は火がキーアイテムとなる。それに、登場人物たちの熱さ。燃えたぎる情熱ジャーナリスト・ミカエル。ミカエル以外の登場人物も結構みんな熱いんです。それがまた読んでいて心地いい。
友情は敬意と信頼に基づく
サランデルは前作からも強烈な印象を残していますが、彼女の性格を読み解こうとすることは非常に難しい。友達になる、ということも一筋縄では行かない。そもそも友達とは? こうした点で、サランデルは今作の事件前後に思い悩み、葛藤します。
思い悩むのはリスベットのことを真っ直ぐ見てくれる人がようやく複数人現れたからに他ならない。何故今まで屈折した視線を浴びてきたのか、は今作とシリーズ第三作に続く問題でもあります。
物語の後半葛藤するリスベットの気持ちに、私も人付き合いに関して共に悩みました。今まで敬意と信頼を損なわずに生きてきただろうか。(いや生きていない:力強い反語) こういった点でもミレニアムシリーズは面白い。ミカエルと雑誌ミレニアムの編集長エリカ・ベルジュとの関係もなかなか特殊です。友情であるとか、自分の倫理観と照らし合わせながら読むのも醍醐味。
女を憎む男たちよこんにちは
今作では、人身売買や売春がテーマとなってきます。小説の一説を借りると、
社会的にこれほど黙認され、解決のための努力がほとんどなされていない犯罪行為もまた、ほかにはないと思います。
スウェーデンの法律でも厳しく罰則規定が定められているものの、実はほとんど問題にされていない人身売買や売春。この事実を厳しく批判しようとミレニアムは動き始めます。
ミレニアムシリーズ第一部の原題である「女を憎む男たち」はシリーズを通してそこかしこに出現します。一方で男女の性差なんて超えたカッコ良さを持つ登場人物も多く登場するのです。今でもほとんど無意識に女性を差別している男はいるな、と考えたり、もしかして自分もそうなっていないだろうかと考えたり。作者のスティーグ・ラーソンが第一部から通じて訴えているメッセージはこの第二部、そして第三部までもストーリーの中で訴えられています。
積ん読しとこ? そーれツンドクツンドク! ツンドクツンドク!
第二部の下巻、文芸評論家の北上次郎氏が書かれた後書きでは
ぜひ積み上げて一気読みすることをすすめたい。(中略)至福の読書があなたを待っているはずだ。
とある。そう、ぜひ一気に読んで欲しい作品。いやー、実は第一部を読み終わって「よっしゃ第二部や!」ってなった時に実家に第二部以降を置いて来ていたというね。その時の絶望たるや・・・タルタルソースをスーツにこぼした時感じる絶望の12倍です。
そして相変わらず睡眠時間を奪われます。ありがとうミレニアム。では、私は第三部を読むのに忙しいので・・・