漫画『或るアホウの一生』 じゃあいつ指すの? 今なの?
漫画『或るアホウの一生』をオススメしたいのです。
『東京心中』を書いたトウテムポールさん作、将棋の世界をテーマにした漫画。実は隠れ将棋ファンの右の玉ですこんにちは。
将棋ファンって言いつつ、そんなにプロ棋戦を見る訳でもなく、そこまで指す訳でも無いのであまり大っぴらに「ファンです!」とは言わないのですが、右の玉っていうハンドルネームも本当は「右玉(みぎぎょく)」にしようか迷ったくらいのファン加減。いいかげん。
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あらすじ
文化人「黙ってハイって言え!!!」
漫画『或るアホウの一生』 見所ポイント
①熱すぎない将棋漫画
あの熱過ぎる将棋漫画『ハチワンダイバー』も大好き&大好きな右の玉ですが、『或るアホウの一生』は全4巻で読み終わった後の清涼感というのか、清々しさ、この言葉が合っているのかは分からないけど、面白い短編小説を読み終わった後のような感覚がありました。
17歳でプロ棋士になる主人公の、プロになるまで、プロになってからの期間や、主人公と天才棋士との出会い、天才棋士の幼少期などが描かれていて全4巻の中で主人公以外もそれぞれの葛藤がありながら将棋というものと関わっていく様子が描かれています。
リアルな将棋世界もクセのある人物が多く(ひふみんとか)、プロ棋士の実際のエピソードだけで漫画が描けそうなほどある訳ですが、『或るアホウの一生』ではそういったエピソードはほとんど使わずにそれでいて将棋に向き合う人々の思いをグリリと描いていて面白い。
②だけど熱い将棋漫画
ただ、結局主人公たちは熱いんです。読み終わった後は柚子シャーベットくらい爽やかな気持ちでした(個人の感想です)が、プロ棋士になる・ならないは一生が決まる出来事ですからね。そら熱いです。プロになるまでには年齢制限、プロになったあとも安泰という訳には行きません。負けが続いたら辞めさせられる可能性があります。
リアルの将棋界では「米長哲学」という考えがあり、例え自分にとって消化試合(負けても別に良い試合)であっても相手に取って大事な試合(例:負けたら降格・プロの資格剥奪)であれば全力でぶつかるという、今は亡き米長邦雄氏が提言した哲学が根付いています。そういった点には漫画内では触れませんが、「学校なんて止めれば良いだろ、プロは負けてたら辞めさせられるんだぞ」という主人公の友人が言うセリフには、そんなプロの厳しさが現れています。
続きはネタバレなのかもしれない
お前に呪いかけてやろうかな 一生将棋指しちゃう呪い。
漫画の中で描かれる天才棋士が幼少時代の主人公に言うセリフが上記の呪い発言。主人公はプロになったので一生指すことになるでしょう。そうでなくても、プロ棋士を目指す方達はプロになれなかったとしても一生将棋が頭の中にあるとは思うのですが、この天才棋士が主人公にこの「呪い」をかけたのは、自らが成し遂げられなかった夢のためか悔しさのためか、将棋の面白さにのめり込んで欲しかったのか、明確には描かれませんが、そこがこの漫画の良いところ。主人公や主人公の友人たち、対戦する相手棋士たち、誰もが真剣にプロ棋士になることやプロ棋士として勝って行くことに悩み向き合っている訳ですが、そこには単純明快な答えは無い。考えがまとまるまで待ってくれる訳もなく、次の試合はやってくる。指すことでまた考えは動き出す。
このブログに来た方に呪いをかけてやろうかな 将棋ファンになる呪い
将棋の楽しみ方もどんどん増えて、プロのタイトル戦ではお昼ご飯やお菓子タイムが話題になったり、指すだけではなく、プロが将棋を指しているのを見る専門のファンもいらっしゃったり、将棋の漫画のみ好きと言う方もいるかもしれません。
いろいろなファンの形があると思います。最近は指すのもスマホアプリで簡単に出来ますし、プロの棋戦もネット上で見られる。将棋のいろいろな側面を描いた漫画も増えた。ありがてえありがてえ(誰?)。そんな訳で、将棋のルールなんか分からなくても将棋の世界は面白いところがたくさんあります。きっかけの一つに漫画『或るアホウの一生』、いかがでしょうか。