小説『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』 〜6年ぶり通算5度目読了。面白いよ〜
だいたいのことは3日で忘れる右の玉ですこんにちは。
だからこそ、面白い本は何度でも新鮮な気持ちで読み返せるというお得な記憶力。ありがとうございます。
通算5回目の読み直しをし始めた『ミレニアム』シリーズ。とりあえず第一部が読み終わったので書き留めてみたい、そんな気持ち。
全世界で6300万部以上売れているこの本、私が持っている版の帯を見ると日本でも160万部以上は売れたみたいです。
いや、もう五度目ですからね、流石にストーリーなんとなく覚えてますよ(五度目で「なんとなく」ってどうなの?という疑問は置いといてください。)
だから比較的冷静に、「あーそうそうこんな始まりだったなー」くらいのテンションで読んでいましたが、下巻に入ってからはフガフガ言いながら夜更かししつつ読んでしまいました。おかげで次の日の仕事中の記憶がありません。本当にありがとうございました。
もうすでに読んでいる人もたくさんいるかとは思いますが、まだまだ読んでいない人もいるでしょう。いつ読むの!今なの?
んーオススメしたい。神様、オラにみんなに伝える文章力をください。
あらすじ
大富豪「ちょっとウチの家族史書いてくれない?」
主人公「え、いやです」
主人公はミカエルは経済ジャーナリスト。月刊紙の発行責任者を努め自らも記事を書く。そんな彼が裁判に負けるところから物語は始まるのです。
ああ、、なんで今までなぜミレニアムシリーズをオススメする記事を書かなかったのだろうか?
はい、この面白さをどうやって伝えればええねんってなったからです。ワイの文章力でどうやって伝えたらええんや! 読んでくれえや! 読まなわからんですやん! って思ってたからです。*1
でも伝えたい。この面白さ。がんばれ私。とにかく書いてみよう。
ミステリー小説かつメッセージ盛り盛り山小説
ミステリーとしても非常に面白いし、やはり謎解きと言いますか、この第一部を読んでいく醍醐味はどういった「謎」が隠れているんだ? と予測しながら読んでいくことだと思います。
一方で、作者のスティーグ自身が経済ジャーナリストだったということもあって、主人公のミカエルは作者の考えも反映しているような人物に見えます。
主人公のミカエルは、スウェーデンの株式市場が大暴落した際に、株式市場はこの国の”経済”そのものじゃないですよ、経済の実態は実際に物を作り日々働いている人たちが作り出すものです、という意味の発言。
個人的には確かになーと思いながら読んだり。
章と章の間ではストーリーとは別に、
スウェーデンでは女性の四十六パーセントが男性に暴力をふるわれた経験を持つ。
(上巻 p.198)
スウェーデンでは女性の一三パーセントが、性的パートナー以外の人物の人物から深刻な性的暴行を受けた経験を有する。
(下巻 p.18)
といった一文が所々の章の間に書かれています。
スティーグ・ラーソンが女性の権利や社会の現状に関心を抱き問題提起しようとしていたかが伝わってきます。
訳者の後書きを読むと、第一部は邦訳では『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』ですが、原題は『女を憎む男たち』という意味のタイトルが付けられているとわかります。
タイトルや諸所に書かれたスウェーデンでの女性に関する情報は、作者スティーグの伝えたいスウェーデン社会の現状が抱える問題も表しているのではないでしょうか。
それは主人公ミカエルと第二の主人公のリスベットに持たせたキャラクターからも作者の思いは伝わってきます。
男性のミカエルと女性のリスベットは、ステレオタイプな「男性的な主人公」が持つ特性と「魅力的なヒロイン」が持つ特性を意図的に逆転させられているのです。
三部作を通じて作者のスティーグ・ラーソンがこの小説に込めた思い、スウェーデン社会への疑問提起、経済界への痛烈な皮肉。
何よりも作者自身が楽しんで書いていたという事実、この気持ちが読者にも伝わってくるからこの小説は面白いのかもしれない。
作者のスティーグは書き始めたら楽しくなってしまって第二部まで書き終わって、第三部を書き始めた途中で出版社と連絡を取ったそうです。
そんなことあります? 私だったらすぐに作品発表したくなってしまうけど、彼はそれだけ彼自身がストーリーの中にのめり込んでいたのでしょう。
三部まで書き終わって、残念ながら第一部が世に出版される前にスティーグ・ラーソンは心筋梗塞のために2004年に亡くなりました。
構想としては第十部まであったそうですが今となってはどんなストーリーが展開されていたのかはわかりません。
三部までで物語は一度大きな収束を迎えているので、一部が面白いと感じたら二部、三部と読み進めることをオススメします。
物語の終盤、小説にはこんな一説があります。
全編を貫く怒りは、あらゆる読者に力強く伝わるに違いなかった。
(下巻 p.445)
「怒り」とはまた別の思いかもしれませんが、このミレニアムシリーズ三部作からは全編を通して作者が楽しんで書いたことが伝わってくるような熱さを感じます。
沸沸と。冷静な怒りと熱い楽しさと。
ぜひ読んで欲しい一冊。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』、もし読んでみて面白かったらそのまま第二部、第三部も楽しんでください!
*1:右の玉は神奈川育ちです